※今回は、料理とは関係のない記事です。

日本文学 表紙


日本の文学小説を読んでみたいけれど、何を読んでいいのか分からない。

そんな方のために、今回は、私が今まで読んできた小説の中から、本当におすすめの作品をランキングで紹介します。

マイナーなものは避けて、日本文学が好きな方なら誰もが知っているような、有名な作品に絞りました。

日本文学は、描写がとても繊細で、人間の内面を鋭く描きます。

読む者の魂に火をつけます。

退屈な毎日、刺激のない毎日を過ごしている方は、きっと心が震えるほどの体験ができるはず。

ランキングにしましたが、順位は僅差でどれもお勧めです。

ぜひ、本を選ぶさいの参考にしてみて下さい!





日本の文学小説ベスト20




第1位 夢十夜/夏目漱石

初出:1908年(明治41年)「朝日新聞」

文鳥・夢十夜 (新潮文庫)

明治に活躍した小説家、夏目漱石の短編小説です。

代表作である「坊ちゃん」「吾輩は猫である」などの長編小説とは大きく趣がことなる、幻想的で奇妙な物語。

全10話で、どれも1話でストーリーが完結します。

独特の世界観で、まるで夢の中で幻を見ているような、不思議な感覚になります。

そんな世界で描かれるのは、人の絶望、苦しみ、残酷な運命。

しかし、暗い気持ちにはならず、私は、これを読んだ後は体の力がすっと抜けて、軽い放心状態になります。

何度も繰り返して読みたくなる、最高の小説です。






第2位 春琴抄/谷崎潤一郎


初出:1993年(明治8年)「中央公論」

春琴抄 (新潮文庫)

明治の末期から昭和にかけて活躍した、谷崎潤一郎の中編小説です。

盲目になる三味線の女師匠と、その弟子の恋愛を描いた物語。

2人の愛は、ものすごくいびつで、醜く、それでいて誰よりも深く結ばれています。

2人の関係がゆがんでいるほど、その愛が輝いてみえる。こんな奇妙な愛情があることに、強く心が打たれます。

毒気の強い小説ですが、これを読む前と後では、人間の見方がガラっと変わってしまう、それほど力のある作品です。






第3位 雪国/川端康成

初出:1935年(昭和10年)「文藝春秋」

雪国 (新潮文庫 (か-1-1))

昭和の初期に活躍した、ノーベル文学賞作家、川端康成の長編小説です。

「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」この有名な一文で小説は始まります。

山奥の温泉場での、男女の恋愛を描いた物語。

とにかく描写が繊細で、目の前にさまざまな美しい自然の風景が浮かんできます。

その文章は天才的で、神業のような鋭さ。

この小説は、遠い未来、きっと日本の文化遺産のようなものになっていることでしょう。






第4位 黒い雨/井伏鱒二

初出:1965年(昭和40年)「新潮」

黒い雨 (新潮文庫)

昭和に活躍した、井伏鱒二の長編小説です。

広島に投下された原爆で被爆した、若い女性の悲しい運命を描いた作品。

原爆で街が焼かれて、地獄のような状況を描いているのですが、文章が落ち着いていて、それがかえってリアリティーを増し、読む者に迫ってきます。

戦争というものの悲惨さが心の奥まで突き刺さってくる、読み進めるのが重く苦しい小説です。

ぜひ、多くの方に読んでもらいたい傑作です。






第5位 こころ/夏目漱石

初出:1914年(大正3年)「朝日新聞」

こころ

夏目漱石の長編小説です。

親友と恋愛で三角関係になった主人公が、親友を自殺に追い込んでしまうストーリー。

主人公は決して悪人ではなく、どこにでもいる普通の人間です。それが、恋愛による苦悩で、親友をおとしいれて自殺に追い込んでしまう。

これは、誰にでも起こりえる恐ろしい事実です。

夏目漱石の、人間に対する大きなメッセージが伝わってくる傑作です。






第6位 人間失格/太宰治

初出:1948年(昭和23年)「展望」
斜陽・人間失格・桜桃・走れメロス 外七篇 (文春文庫)

昭和に活躍した、太宰治の中編小説です。

太宰治は「走れメロス」という代表作がありますが、人間失格はまったく趣がことなる作品です。

人間不信で苦しむ主人公が、どん底まで落ちていくストーリー。

この小説を読むと、主人公に共感できる人と、全く共感できない人の2つにはっきり分かれるといいます。

私は前者です。完全に自分のことを書かれているような、丸裸にされた気持ちになりました。怖いですね~笑

他人を信用できないということは、人生を地獄にします。この小説で心が救われたという人は、本当に多いでしょう。

太宰治はこれを書いた後に自殺をしてしまいますが、そのメッセージは今も多くの人に届いています。







第7位 金閣寺/三島由紀夫

初出:1956年(昭和31年)「新潮」

金閣寺 (1956年)

昭和に活躍した、三島由紀夫の長編小説です。

吃音症のコンプレックスで、惨めな青春期を過ごしてきた主人公が、金閣寺の美しさに取りつかれて、その美に対して葛藤していくというストーリー。

いびつな心を持つ主人公と、絶対的な美しさの金閣寺。

主人公は、金閣寺にあこがれて、陶酔し、裏切られ、決別する。

絶対的な存在がないと生きていけない、そんな弱い人間を、刃物のような鋭さで描いていきます。

魂が震えるほどの、衝撃の作品です。







第8位 沈黙/遠藤周作

初出:1966年(昭和41年)「新潮社」

沈黙 (新潮文庫)

昭和から平成初期に活躍した、遠藤周作の長編小説です。

江戸時代、キリシタンの弾圧で苦しむ農民を救うために渡来した、ポルトガル人の末路を描いたストーリー。

この小説は、最後までほとんど希望がありません。キリシタンの農民は虫けらのように殺されてしまいます。

「なぜ神はこの状況を黙ってみているのか?なぜ何もしてくれないのか?」

この事実が小説の大きなテーマです。

本当の神とは何か?キリスト教とは何か?

キリシタンである遠藤周作が、その疑問に見つけた答えがこの小説に書かれています。






第9位 ねじまき鳥クロニクル/村上春樹

初出:1992年(平成2年)「新潮」

ねじまき鳥クロニクル〈第1部〉泥棒かささぎ編 (新潮文庫)

現在も活躍中の、村上春樹の3部にわたる長編小説です。

人間の無意識の領域での活動を、現実世界と交錯させて描いた物語。

無意識とはいったいどういうものか?

ふだん自覚できる自意識は、氷山の一角のようなもので、心の大部分は無意識の働きに支配されています。

この小説では、主人公が敵対する相手と、無意識の中で激しいバトルを繰り広げます。これがたまらなく面白い!

人の感覚が新しい世界に突入するような、そんな面白さが味わえる作品です。






第10位 砂の女/阿部公房

初出:1962年(昭和37年)「新潮社」

砂の女 (新潮文庫)

昭和に活躍した、阿部公房の長編小説です。

昆虫採集のために砂丘を訪れた主人公が、そこに住む人たちに捕らえられ、閉じ込められてしまうというストーリー。

人は、なかなか自分を変えることができないといいます。

一度ある状況に慣れてしまうと、無意識の働きでそこから抜け出せなくなる。

頑張ってダイエットした人が、一気にリバウンドしてしまうのも、太っていたころの自分から抜け出せなくなるように、無意識が働くからだといいます。

この小説の主人公も、まさにその力に飲み込まれていきます。

ざらざらとした砂の世界に閉じ込められる、怖い小説です。







第11位 三四郎/夏目漱石

初出:1908年(明治41年)「朝日新聞」

三四郎

夏目漱石の長編小説です。

九州の田舎から東京にやってきた大学生の、淡い恋を描いた青春小説です。

青年が本当の恋をして大人になっていく、その心情がとてもよく書かれています。

「昔、こんな気持ちで恋をしていたな」と、懐かしく、もどかしく、にがい思いがよみがえります。

登場人物もユニークで、どの人物も顔が浮かんできます。夏目漱石は、登場人物をリアルに描くのが本当にうまいです。

青春時代を見事に表現した、心にのこる作品です。






第12位 海と毒薬/遠藤周作

初出:1957年(昭和32年)「新潮社」

海と毒薬 (新潮文庫)

昭和から平成初期に活躍した、遠藤周作の長編小説です。

太平洋戦争で、捕虜にした米兵を人体実験した事件「九州大学生解剖事件」を題材にした作品です。

人を救うことに大きな情熱をもっていた医大生が、戦争で多くの人が死んでいくどうにもならない状況の中で、しだいに変化していきます。

そして、米兵を人体実験で解剖するという、悪の手助けに関わっていく。

もがいても抜け出せない、暗黒の世界にのみ込まれてしまう。世の中には、こういう運命を持つ人がたくさんいます。

とても深く考えさせられる作品です。






第13位 告白/町田康


初出:2005年(平成17年)「中央公論新社」

告白 (中公文庫)

現在も活躍中の、町田康の長編小説です。

昭和26年に起きた連続殺人事件「河内十人切り」を題材にした作品です。

内向的で、強い空想力を持つ田舎の青年が、世間と自分の心の世界のギャップに悩み、苦しんでいきます。

芸術家もそうですが、空想力が強い人間は、世間から変人として扱われやすいです。

その偏見に対して、解消するすべがない主人公は、どんどん追い詰められて、ついに殺人鬼になってしまいます。

内向的な人間とは何か。そのテーマに徹底的に挑んだ傑作です。







第14位 地獄変/芥川龍之介

初出:1918年(大正7年)「東京毎日新聞」

地獄変

明治に活躍した、芥川龍之介の短編小説です。

狂人の絵仏士が、愛する自分の娘が焼かれて死んでいく姿を見て、傑作の地獄絵図を描き上げるというストーリー。

人間の美意識とはいったい何なのか?

地獄を描くために、自分の娘が焼かれる姿に感動する絵仏士。

ある種の美しさの裏には、恐ろしい狂気が潜んでいる。その現実をつきつけられます。

限界に近い感覚で書かれた、恐ろしい小説です。






第15位 潮騒/三島由紀夫


初出:1954年(昭和29年)「新潮社」

潮騒 (新潮文庫)

昭和に活躍した、三島由紀夫の長編小説です。

小さな島で、漁師の青年と、漁村の娘の初恋を描いた青春小説です。

大自然の中で生きる人間の美しさ、純粋さ、心の激しさ。

読んでいると、波の音、風の音、海の輝き、そんな美しい光景が目の前に浮かんできます。

人生に迷った時、つかれた時、ぜひ読んでほしい一冊です。






第16位 破壊/島崎藤村

初出:1905年(明治38年)

破戒 (新潮文庫)

明治から昭和の初期に活躍した、島崎藤村の長編小説です。

被差別部落出身の主人公が、自分の素性を隠して教師として生きていくが、しだいに追い詰められていくストーリー。

人種差別とは、どれほど非人間的なものか、差別を受ける人間はどれほどの苦しみを味わうのか、その事実が深く描かれています。

日本でも、人種差別がたしかに存在していたのです。

そんな地獄のような社会でも、あたたかい心を持った人たちもいる。

深く感動できる作品です。

破戒 (新潮文庫)
島崎 藤村
新潮社
2005-07







第17位 原色の街/吉行淳之介

初出:1951年(昭和26年)「世代」

原色の街・驟雨 (新潮文庫)

昭和に活躍した、吉行淳之介の短編小説です。

舞台は、戦後の赤線という売春街。

生活のためだけに働く一人の娼婦が、特別な男の客と出会い、初めて恋に落ちていくというストーリー。

吉行淳之介は、ものすごく繊細な文章を書く作家です。

ギラギラした原色があふれる売春街。そこに住む娼婦たちの心情を繊細に描いています。

読んでいると、自分の感覚がより敏感になっていくような、不思議な感覚にとらわれます。






第18位 痴人の愛/谷崎潤一郎


初出:1924年(大正13年)「大阪毎日新聞」

痴人の愛

明治の末期から昭和にかけて活躍した、谷崎潤一郎の長編小説です。

主人公の男が、10歳以上も年下の悪女にとりつかれ、破滅していくストーリー。

悪い女というものは、ここまで男を狂わせるものなのかと、思わず身の毛がよだちます。

愛とは綺麗なものだけではなく、依存という恐ろしい一面もかね備えている。

その事実をどこまでも突き付けてくる、恐ろしくも面白い作品です。




第19位 それから/夏目漱石

初出:1909年(明治42年)「東京朝日新聞」

それから・門 (文春文庫)

夏目漱石の長編小説です。

10位で紹介した三四郎の次に発表された作品ですが、内容はがらっと変わり、かなり重たい小説です。

親の財産で自由に暮らす主人公が、友人の妻を奪い、親から勘当されて、世の中に放り出されるストーリー。

愛のために破滅の道をゆく、最後のシーンが劇的です。

明治という近代社会で、世の中が西洋化して大きく変わっていく時代、そんな社会への批判を込めたメッセージも強く感じられます。

明治という時代の空気を感じるには、最高の小説です。






第20位 遠藤周作/深い河


初出:1993年(平成5年)「講談社」

深い河 (講談社文庫)

昭和から平成初期に活躍した、遠藤周作の長編小説です。

本当の救いとは何か?5人の登場人物がさまざまな思いを持って、インドのガンジス河を訪れます。

見えや世間体を強く気にする下らない人物と、真実の信仰をつらぬいてボロボロになっていく者の姿を対比させて、宗教というものの本質に迫っていきます。

死体を焼いて灰を流すガンジス河。そこで水浴びをするインドの人たち。

こんな光景が、美しく、深く、感動的に描かれています。







以上、20作品でした!

これらが、これから日本の文学小説を読んでみたい方の参考になれば幸いです。




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